愛のない部屋
篠崎は悪い人ではないが、あれこれ余計なことを詮索してくるため好きになれない。
誰とでも打ち解けようとするその姿勢は尊敬するが、私の引いた境界線に立ち入って欲しくない。
「社内の女の子たち、朝から噂してたよ?」
「そうですか」
「普通、どんな噂?って聞くところじゃない?」
「興味ありませんから」
長引きそうな話に苛立ちを覚え、口走ってしまった。
残業したくないから早く終わらせたいのに。
「つれないねぇ」
篠崎は気にした様子もなかったので、とりあえず一安心。
「まぁ噂の内容、君もその内分かるよ」
何故か楽しそうに言う上司の言葉に適当にうなづいた。
「よし、仕事しよう」
とっくに始業時間になっているというのに、マイペースな人だ。
自分のデスクに戻っていく篠崎を目で追い、そっと溜息をついた。