愛のない部屋
「だーめっ」
拒否するのも可哀想な気がするけれど、お腹減ったし。
「無理矢理は趣味じゃないんだが……、沙奈がそんな態度とるんだったら、俺も考えるよ?」
「嘘。峰岸は私の嫌なことなんて、絶対にしない」
無理矢理なんて、できるはずがない。
「……参ったな」
小さくため息をついた峰岸は、不満気な声を出す。
「じゃぁ変わりに名前、呼べ」
「なんで?」
「いっつも峰岸、峰岸…って、2人きりの時くらい勘弁してくれ」
――慶吾、
その愛しい名前を呼ぶには、勇気がいる。
「ほら、早く」
急かされてすぐに名前を呼べたのなら、今までだってそうしてるはず。なんか緊張してしまうんだよね。
「……奴のことは、なんて呼んでた?」
そんな嫌そうに言うなら、無理して聞いてくれなくても良いのに。
「先生は、先生。名前で呼んだことはなかったよ」
一度も名前で呼ばなかったなんて、今考えたら申し訳なかったかな。