愛のない部屋

「沙奈……大胆だな」


珍しい行動に出てしまった。



私から抱き着いたことなんて、数えられるくらいしかない。



「安心する……」



言葉よりも温もりが必要な時だってある。



まさに今、私が欲しているのは峰岸の体温だろう。



「いつも強がりばかり言ってるけどさ、たまにこうやって甘えても良いかな?」



見上げて峰岸の顔を見れば、視線が絡む。



「もちろん。こういう上目遣いを狙ってやってないとこも、沙奈の可愛いところだよな」



「……」



恥ずかしくて目線を下げれば、彼の手が顎に掛けられた。



「俺が喜ぶこと、してくれる?」



「なに……?」



なんか嫌な予感がする。



「内容による」と慌てて付け加えれば



不敵な笑みを浮かべた峰岸は、楽しそうに言う。




「沙奈からキスして?」




予感的中。



「無理無理、絶対に無理!」




首を振れば、鼻を摘ままれた。



「ふぅん。俺とキスするのが嫌なんだ」



「嫌なわけないじゃん!」



「じゃぁ、シてよ?」



意地悪。



峰岸の悪魔ー!


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