愛のない部屋
タキとの出逢いの場所に、峰岸がいることにただただ違和感を覚える。
タキと私の大切な場所に踏み込んで欲しくなかった。そう思うことは失礼かな。
「ありがとう」
水で手を冷やしてから戻ると、テーブルは綺麗に片付いていた。
「新しいの注文しておいた」
「ありがとう」
抜け目ない男。
気配りができない男は出世できないというけど、峰岸を見ていると最もな意見だと思える。
「どうして此処に?」
「滝沢さんから連絡があって。おまえが俺に用があるらしいからファミレスに行け。って言われた」
おまえの用事はともかく、滝沢さんからの指示ならすっぽかすわけにはいかないからな、
と付け加えられた。
「私がアンタに用事?」
タキはいったい何を意図して峰岸を呼んだのだろう。何を企んでいるのか。
「やっぱ違うか」
「え?」
「おまえが俺に用があるとは思えないしな。あるとしても家で言えば良いことだ。わざわざこんなとこに呼び出す必要もない」
「うん」
「まぁ今朝の謝罪くらいは、しても良いと思うけどな」
右手で頰をさすった峰岸を見て、叩いてしまったことを思い出した。