愛のない部屋
広い店内でやっと見つけたラーメンの陳列棚の前で、峰岸に聞く。
「なに味が良い?」
「味噌」
「私は醤油が良い」
「はぁ?」
「今日は醤油、って気分なの」
「俺は味噌が食いたい」
「……」
「……」
どちらかが譲ればいい話。
味噌か醤油、そこまでこだわることでない。
「醤油」
「いや、味噌だね」
「……」
「……」
子供染みた会話。
「レディーファーストでしょう?」
「…おまえは、女じゃない」
なんだこの男。
大分ムカつくんですが。
「もう分かったよ」
おっ、妥協を示すか?
醤油に手を伸ばそうとしたが、それより早く峰岸が袋を掴んだ。
「間をとって塩な」
「……」
「文句ないだろ?おまえが譲るというなら味噌にするけど」
「塩で良いわよ!」
味噌でも醤油でもない、
"塩"味がカゴに放り込まれた。
「峰岸、アンタはガキだよ」
「そのガキに張り合うおまえも、同じく馬鹿なガキだっ」
ホント、私たちは大人じゃないね。
でもこの関係が心地良いよ。