愛のない部屋
「で、なにを作ってくれるの?」
「あ、うん……じゃぁラーメンにしよ?」
「ラーメン?」
「カップラーメン食べようとしてたんでしょ。予定通りラーメンで」
「なんだよ、そりゃ」
キタイハズレ、
そんな顔をした峰岸は数秒後にはケラケラ笑い出した。
「なによ?文句ある?」
「おまえらしいよ、な」
店内に入り、買い物カゴを掴んだ峰岸はまだ笑っていた。
「男に手料理、って言ったらさ。肉じゃがとかオムライスとか。可愛らしいものを披露するんじゃないの?」
「私に可愛らしさを求めるわけ?」
肉じゃが、オムライスのどこが可愛いのか、理解に苦しむ。
「だから、おまえらしいんじゃん」
誉められているのか、馬鹿にされているのか。
「インスタントラーメンでも良いからさ、今晩の料理担当はおまえな」
「仕方ないからラーメン、作ってあげるわよ」
さっさとラーメンのコーナーに向かおうとして、初めて来たスーパーだと気付いた。
「ラーメン、どこ?」
「知らない。俺も初めて来たから。コンビニか外食に頼りっぱなしだったからな」
どうやら料理はしないらしい。
ここまで完璧な男に料理まで出来るなんて言われてしまえば、本当に女の立場がなくなってしまうから少しほっとした。