愛のない部屋
翌朝、目覚まし時計が鳴るよりも早く目が覚めた。
リビングに顔を出せば慌ただしく動く峰岸の姿が見える。
ラフな服装なので仕事でないことは察した。
敢えて"何処に行くの?"なんて質問はしない。
「休日のお風呂とトイレ掃除はアンタの担当だからね。しっかりやってよね」
私の家ではないけれどどうでもいい台詞を吐く。
「あ、起きてたのか。昼までには帰るから」
「そう」
どうでもいい。
峰岸が誰と逢うのかも、何処に行くのかも、
どうでも良いはずなのに。
気になっているのは、何故なのか。
「行ってくる」
「うん」
「滝沢さんから連絡合ったら、頼んだぞ」
「はい」
まだ7時前だというのに峰岸は家を出て行った。
「さぁ洗濯でもしよう」
珍しく早起きした貴重な休日だ。
時間を有効に使おうと決めて、早めの朝食をとる。
洗濯機でも回そうかと立ち上がると、玄関のチャイムが鳴った。
峰岸が行ってから30分程、経った頃。
「どちら様ですか?」
インターホン越しに尋ねれば、
「おはよ~篠崎です」
朝からハイテンションな声が耳に響いた。