世界で一番似ている赤色
「……っく、うっ」
とりあえず駅まで来れたものの、涙が止まらない。
トイレにこもり、気持ちが落ち着くのを待った。
川瀬くんを本気で怒らせてしまった。
覚えとけよ、って言われた。
わたしは、どうしたらいいんだろう。どうしたら許してくれるんだろう。
時間は夜6時半。そろそろ帰らなきゃ。
でも……
『いい人だよ。頭いいし、かっこいいし、運動神経いいし、優しいし。お父さんも昔、そんな感じだったんじゃない?』
『南中の元生徒会長で、いいとこの息子さんよ~。成績も学年トップクラス。綾すごい人つかまえたじゃない』
まっすぐ家には帰りたくなかった。
こんな姿で帰ったら絶対に家族に問い詰められる。
スマホを手にする。
朱里ちゃんから練習風景の写真が、大和くんから可愛いお化けスタンプが届いていた。
さっきのこと、言える空気じゃない。突然すぎて言えない。
気がつくと『友達を探す』画面を開いていた。
どくん、どくん、と鼓動が体に響く。
画面上で指を動かす。あるアルファベットが入力されていく。