コーヒーに砂糖とミルクを注ぐ時
「……ご注文は以上でしょうか？」

注文された品を美桜さんたちのテーブルに置く。蓮さんが「ありがとうございます」と微笑んだ。

空いたテーブルを片付けている間も、五人の会話から耳が離れない。聞きたくないはずなのに、どうしても聞いてしまう。

「そういえば、翔くんはもうすぐお見合いするんでしょ？」

美桜さんが訊ねると、翔さんは恥ずかしそうに頰を染めた。

「ああ……」

「どんな人とお見合いするの？」

空さんと蓮さんが興味津々に訊ねる。翔さんは顔をさらに赤くしながら言った。

「……パーティーで出会った女性で、お見合いをしたいとこちらから申し込んだ。今度の日曜日にお見合いをする」

「一目ぼれってやつだね！」

椿さんがニヤニヤ笑う。

「翔くんは新婚旅行、どこに行きたい？」

「……俺は北欧に行きたい。きれいなオーロラが見たいんだ」

美桜さんの質問に、翔さんは笑いながら言った。

お見合い……。私と同じだ。それでも、彼はとても幸せそうだ。きっと相手も……。

「デンマークの街並みはすごくきれいだよ！オススメ！」

私の重い心を無視して、あの五人はずっと幸せな話を続ける。
< 8 / 28 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop