コーヒーに砂糖とミルクを注ぐ時
「お母さん!この本読んで!」
桃華ちゃんが美桜さんに本を手渡す。
「はいはい」
美桜さんが苦笑する。すると、蓮さんと手遊びをしていた遥くんも美桜さんの方を向いた。
「はるも聞きたい!」
みんな幸せそうに笑っている。私だってこれから幸せになるはずなのに、ちっとも嬉しさを感じない。
みんなの笑顔が虚しく感じ、私は逃げ出したかった。
午後七時。サンタクロースは閉店した。
残っている洗い物をし、何となく掃除がしたくなったのでほうきを手に取る。明日でこのカフェはなくなる。長いようで短い歴史だ。
カラン、コロン。
ベルの音に私は顔を上げる。閉店の看板はドアの前に出したはずだ。
「申し訳ありません。本日はもう閉店で……」
入ってきた人は、すらりと背の高いスーツ姿の男性だった。
その顔を見た瞬間、私の頭の中に思い出が広がる。
月の光のように優しい笑顔。本をよく図書室で読んでいた。女の子たちからモテていて、私もずっと憧れていた人ーーー。
桃華ちゃんが美桜さんに本を手渡す。
「はいはい」
美桜さんが苦笑する。すると、蓮さんと手遊びをしていた遥くんも美桜さんの方を向いた。
「はるも聞きたい!」
みんな幸せそうに笑っている。私だってこれから幸せになるはずなのに、ちっとも嬉しさを感じない。
みんなの笑顔が虚しく感じ、私は逃げ出したかった。
午後七時。サンタクロースは閉店した。
残っている洗い物をし、何となく掃除がしたくなったのでほうきを手に取る。明日でこのカフェはなくなる。長いようで短い歴史だ。
カラン、コロン。
ベルの音に私は顔を上げる。閉店の看板はドアの前に出したはずだ。
「申し訳ありません。本日はもう閉店で……」
入ってきた人は、すらりと背の高いスーツ姿の男性だった。
その顔を見た瞬間、私の頭の中に思い出が広がる。
月の光のように優しい笑顔。本をよく図書室で読んでいた。女の子たちからモテていて、私もずっと憧れていた人ーーー。