Take me out~私を籠から出すのは強引部長?~
父の望むように演技をするのももう慣れたものだ。
涙だって自在に出せるし、ときどき女優としてやっていけるんじゃないかとか思ったりもする。

「こんなにか弱い愛乃に怒鳴ったりできるなんて、高鷹は人間じゃない、鬼だ」

確かに、怒るのは仕方がないが怒鳴るのはちょっとやり過ぎじゃないかな、とは思ったけれど。
あっちは多忙で有名な高鷹部長なので、貴重な時間を無駄に使ってしまってイラついていたのだろう。
そしてその無駄な時間を過ごさせてしまったのは私だ。
なら、怒鳴られても仕方ない。

――と、私自身はちゃんとわかっている。

もそもそと父の腕の中から抜け出て目にいっぱい涙を溜め、じっと父の瞳を見つめる。

「いえ。
私がちゃんとできなかったのが悪いんですし」

すーっと視線を逸らし、はぁっと小さくため息をついてみせた瞬間。

「愛乃!」

また勢いよく、父に抱きつかれた。
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