Take me out~私を籠から出すのは強引部長?~
しかも夕方で少し髭が伸びてきて、さらには脂も浮いている頬を、私の顔にざりざりと擦りつけてくる。
小さい頃なら、パパー、くすぐったいなどと喜んでいたんだろうが、二十歳を過ぎた娘にされても気持ち悪いだけだ。

「こんなに健気な我が娘に怒鳴れるなんて、やっぱり高鷹は人形の顔をした鬼だ。
鬼のいる会社なんて辞めて、家にいたらどうだ。
ん?」

毎度の提案に、毎度のため息を心の中でつく。

「でも私は、少しでもお父様やおじさまや、はるくんのお役に立ちたいですし。
けれど役に立たないどころか邪魔だとおっしゃるのなら、お父様の言うとおりにします」

ことさら殊勝なことを言い、目を伏せて悲しそうに俯いた。

「邪魔じゃないとも!
愛乃が同じ会社にいるだけで、お父さんは頑張ろうって思えるし、きっと春熙君も同じだよ」

慌てた父が、慰めるように肩を抱いてくる。

「本当ですか」

「ああ、本当だとも!」
< 17 / 340 >

この作品をシェア

pagetop