Take me out~私を籠から出すのは強引部長?~
涙が溜まったままの瞳で私が嬉しそうに笑ってみせると、父はほっと息をつき、大げさに喜んでみせた。

「お父さんは愛乃と一緒の会社で仕事ができて嬉しいよ」

――はい、これでこの話はおしまい。

父が私に会社を辞めさせようとするたび、使う手だ。

コンコン、とドアがノックされ、壁にかかった時計を確認していた。
すでに終業時間から一時間が経過している。

「誰だ?」

せっかくの愛娘との時間を邪魔され、父が一気に不機嫌になった。

「東藤(とうどう)です。
愛乃、そこにいますよね?」

「ああ、どうぞ」

「失礼します」

すぐにドアが開いて東藤――春熙が入ってくる。
一瞬前の不機嫌はどこへやら。
父はにこにこと笑って春熙に私の隣を譲った。
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