Take me out~私を籠から出すのは強引部長?~
「はい、行ってまいります」

笑って立ち上がり、急かすように春熙の腕をとる。

「では、失礼いたします」

苦笑いで春熙も立ち上がり、父に見送られて専務室を出た。
エレベーターに乗った途端にため息が漏れる。

「ほんとお父様、嫌になっちゃう」

「それだけ愛乃が可愛いってことだろ」

春熙は笑っているけれど、私にはそんなに簡単な問題ではない。


すれ違う人が皆、春熙にあたまを下げる。
春熙はIoT本部長ってだけじゃなく、社長の息子だから。
そして私が専務の娘な上に、そんな春熙の幼馴染みで婚約者だから。

「いつものお店でいい?
違うところがいいならそうするけど」

駐車場に回り、春熙の車に乗り込む。
春熙自慢の白いポルシェはいつも、顔が映るほどぴかぴかに磨き込まれている。
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