Take me out~私を籠から出すのは強引部長?~
「お父様……」

ぽつりと呟いた父は酷く淋しそうで、父にもそんな感情があったのだと初めて知った。


春熙が着替えてくるのに私が普段着などダメだろうと、無理矢理着替えさせられた。

「真夏に振り袖は暑いんだけどな……」

礼装なんだから仕方ないとわかっていても、苦笑いしかできない。
訪問着なら夏用の絽があるが、振り袖にはたぶんない。
しかも着せられたのは総手絞りの着物で、普通の着物より布地が多い分、さらに暑い。

「我慢だよね……」

せめてもの救いは、節電なんてどこ吹く風でがんがんエアコンで冷やされていること。
いや、それで返って寒いくらいだから、これで正解なのかも。

「本日はお時間いただき、ありがとうございます」

しばらくして、春熙が我が家を訪ねてきた。
真夏だというのにスーツを着てきっちり首もとまでネクタイを締め、ジャケットまで羽織っているが暑くないのだろうか。
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