Take me out~私を籠から出すのは強引部長?~
けれどいつもの泣き落とし作戦で、春熙が先に陥落。
春熙を味方につければ後はこっちのもの。
父は春熙を実の息子のように可愛がっており、説得されれば折れる。

こうして私は晴れて社会に出られるはずだったのだ。

でも、父と春熙の目の届く範囲でと条件をつけられた。
嫌だったけれどそうしないことには私の希望は叶えられない。
こうして渋々、SMOOTHに入社したものの、憧れたように仕事はさせてもらえなかったというわけだ。



「いってくる」

母は毎日、儀式のように玄関まで父を見送った。
いってらっしゃいの言葉すらなく、無言であたまを下げる母に、父への愛情があるのか疑わしい。
もっとも、五十を少し過ぎたとは思えないほどスタイルのいい父は、いまだにあちらこちらで女遊びをしているようだが。

「いってまいります」

私の言葉にも母はやはり無言だった。
昔から父は私を溺愛していたが、見合い結婚した母はいつも、淡々と私にも接していた。
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