Take me out～私を籠から出すのは強引部長？～

運転手がドアを開けた車に乗り込み、父と一緒に出社する。
そもそも入社式に遅刻したのは、父がいつまでたってもぐだぐだと辞めるならいまだとか、拗ねて専務室から出してくれなかったからだ。

「ではお父様、また」

「ああ。
なにかあったらすぐに連絡しなさい」

車を降りて別れ際、父から頬へキスされた。
海外では当たり前なのだろうが、日本では年頃になった娘にそんなことはしないのだと知っている。
本当は嫌だけれど、言えない。

「香芝さん、お茶をどうぞ」

仕事の準備をしていると、杉原課長自ら、わざわざ私にお茶を淹れてくれる。

「ありがとうございます」

本当はそういう特別待遇は嫌だけれど、にっこりと笑ってお礼を言う。
だってもう、これは仕方ないことだから。

こうしてまた、退屈な一日がはじまる。