Take me out~私を籠から出すのは強引部長?~
持ってきたダイニングの椅子を持ち上げ、もう一度大きく息を吸い込んでそれを――窓硝子に叩きつけた。

――ガシャンッ!

――ジリジリジリジリジリジリッ!

硝子の割れる大きな音と、けたたましい警報が鳴り響く。
けれどそんなものにはかまわずに着物の裾をからげ、もうひとつ傍に置いておいた椅子を利用して窓から外へと出る。

「……いったー」

抜け出るとき、硝子に引っかけて頬が切れた。
拭うとぬるりと血がついたが、そんなものにかまっている余裕はない。
警報の音を聞きつけて、坂巻さんがこっちに向かってきているのが見えたから。

「愛乃お嬢様。
勝手に出られては困ります」

いつもと表情の変わらない坂巻さんは、本当に困っているのかどうかわからない。

「そんなの知らない。
車のキーちょうだい、坂巻さん」
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