Take me out~私を籠から出すのは強引部長?~
「……はい」

征史さんはすでに、怖いくらい真剣な顔でパソコンを睨んでいる。
いまはきっと、私は彼の手助けになるようなことはなにもできない。
だからせめて、うまくいくように祈ろう――。



「やっぱりこの傷、病院に行った方がいいと思う」

部長室で私をソファーに座らせ、椎名さんが傷を消毒してくれた。

「でもどうしたの、これ?
それにその格好」

椎名さんが不思議がるのもしょうがない。
着物はあちこち破れて汚れ、草履はなく足袋のみ。

「窓硝子割って脱出したから、それで……」

は、はははと笑うしかできない。

「愛乃ちゃんって、けっこう大胆なのねー」

にやっと、椎名さんは唇をつり上げて笑った。
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