Take me out~私を籠から出すのは強引部長?~
「お父様、また来ます」

返事のない父に小さくはぁっとため息をつく。

何度か家政婦を寄越したものの、断られた。
ちゃんと食事をしているか心配になる。
父は酷く、やつれて見えたから。

後ろ髪を引かれる思いで家を出る。

「愛乃?」

じっと家を見ていた私に、征史さんは怪訝そうだ。

「なんでもないです。
行きましょう」

ここで生活していたときはちゃんとした家だったけれど、父ひとりになってしまうとただの大きな入れ物に見えた。
こんなところにいるから父はさらにふさぎ込んでしまうのだ。
けれど引っ越しを勧めても父は、聞く耳を持たない。
もしかしたらいまだに、過去にしがみついているのかもしれない。

「どうする?
東藤の家に寄るか?」

征史さんが聞きにくそうに聞いてくる。
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