Take me out~私を籠から出すのは強引部長?~
春熙の表情は変わらない。
相変わらずまっすぐ、前を見たまま。

「愛乃は僕が、怒るようなことをしたって自覚があるんだ?」

「うっ」

自覚なんてない。
ただ、無言の空間は居心地が悪かったから。

なにも答えられず、俯いてじっと手を見つめる。
そんな私に、春熙が小さくくすりと笑った。

「怒ってなんかないよ。
ほら、サービスエリア寄るでしょ?
愛乃の好きなソフトクリーム買ってあげる」

「……子供扱い」

さりげなく春熙が話題を変えてきて、私も唇を尖らせてむくれてみせる。
でもさっきの春熙は、――絶対に、怒っていた。



途中で昼食を取ったり美術館に寄ったりしながら着いた今日の宿泊先は、山の奥にぽつんと一軒、隠れ家的に建っている宿だった。
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