Take me out~私を籠から出すのは強引部長?~
これ以上、彼を怒らせないように素早く靴を履き、あっけにとられているみんなを残してその場を後にした。



車の中で、春熙は無言だった。
さらに運転が荒い。

「その。
……ごめんなさい」

「それはなにに対して謝ってるの?」

「あの」

なにに対して?
父と春熙の反対を押し切って飲み会に参加するのが、そんなに悪いことなんだろうか。

なにも言えなくなって俯いた。
自分でも理由なんてわからない涙がじわじわと浮いてくる。
とうとうこぼれ落ちそうになって慌てて鼻をすすり、化粧が落ちるのも気にせずにぐいっと力一杯拭った。

「……はぁーっ」

あきれるように春熙が息を吐き出し、またじわじわと涙が出てくる。
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