朝マヅメの語らい
咄嗟に否定の言葉が口をついたが、考えてみれば、確かにそういう部分がないわけでもない。坂巻のやることがいちいち気になる理由に、いろいろな要素が複合しているのは間違いない。その中に、心配する気持ちも混ざってはいるだろう。五パーセント程度は。

「神長氏。付き合った女を、泣かせてよがらせて、穴かっぴらいて、本人ですら見たことのない部分まで、すべてを知りつくさないと気が済まないタイプだろ」

「どんなタイプですか、それ」
 神長は否定も肯定もしないまま、肩を揺らして笑っている。

「でもまあ、そうやって解剖されんのも嫌いじゃねえよ。どうぞ好きにやってくれ」
 橋爪は片手でロッドを押さえながら、もう片手を大きく広げてみせた。

 心の壁をするりと通り抜けて、奥に沈んでいた感情や思考に触れられる感覚は、恐怖や不愉快さも伴う。

だが、一周回って開き直ってみると、これほど楽な相手もいないのではないかという気さえしてくるから不思議なものだ。
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