朝マヅメの語らい
「餌……、大福ですか?」
「俺の餌じゃねえよ馬鹿! 魚の餌だ、魚の餌!」

「あ、そうか」
 坂巻は、本当に今気づいたといった風だ。普段は気配りまで完璧でも、仕事を離れればそうでもないらしい。

「まだ寝ぼけてんのかよ」
「すみません」

「お前今、笑ってんだろ」
「いえ」

 否定した直後にこらえ切れなくなったのか、坂巻はふっと笑い声を漏らした。妙なやり取りだ。そう思うと、後からあとから、どうしようもなく可笑しくなってくる。

「ほんとに来るのかよ。お前んちから結構遠いし、釣れるかはわかんねえよ?」
「大丈夫です」

 釣れなかったら、坂巻は釣りを面白くないものだと判断してしまうだろうか。ふと思い浮かんだ考えに、橋爪は思わず苦笑した。

ここに来る前は職場の上司として、釣りの先輩としての自分の立場ばかりを心配していたのに、気づけばそんなことよりも坂巻自身の心配をしている。

これも、もともと心のどこかにあった感情だというのだろうか。

(五パーセントじゃねえなこれは)
 頬の辺りに再び笑いがこみ上げてきて、橋爪は奥歯をかみ締めた。


※次回おまけです。短いのですが、コンビニ娘まいちゃんとのエピソードなので、たぶんこれは最後まで読んだほうが面白いかと思います(笑)
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