朝マヅメの語らい
「ええ、知ってますよ」
「……あ?」

「大福売ってるの見つけると、あのお兄さんいつもにこにこしてるから、話しかけたことがあったんです。『ほんとうに好きなんですね』って。そしたら『僕の上司の好物なので』って。だから、たぶんあの人だなって思ってて」

 まじまじと見つめられ、橋爪は狼狽した。これだと麻衣は、坂巻に渡したレモン大福が、橋爪の手に渡るのがわかっていた、ということになる。

(どういうことだ?)
 頭はうまく働かないが、胸の辺りがざわざわする。橋爪の表情が一層険しくなった。

「それで、どうでした? レモン大福。たっぷり入ったあんこの甘さを飽きさせない、レモンの酸味が絶妙じゃありません? うちのよりもぜんぜん美味しいですよね」

「ああ、そりゃまあ」
 麻衣の言葉は耳には入るが、右から左へと流れていく。

「とりあえず会計を」
橋爪は眉間にしわを寄せたまま、眼鏡のブリッジを持ち上げた。
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