王子様は甘いのがお好き
頬に落とされた唇は、今度は口元に移動した。

「…もしかしてとは思いますけど、私のマネをしています?」

「んー?」

社長はクスクスと笑いながら、私の唇に触れるだけのキスをした。

唇を離すと、今度は私を見つめた。

「こんなにも誰かのことを愛しいって思ったのは、君が初めてだよ」

社長が言った。

「最初は理想の髪の毛にめぐりあえて、もっと近くで見てみたいと思って異動させたんだけど…まさか、こんな展開になるとは思ってもみなかったよ」

社長はそう言うと、私の髪の毛に顔を埋めた。

「そうですね…」

今思うと、本当におかしななれそめである。

エレベーターに閉じ込められたトラブルから髪の毛を社長に気に入られて、それがきっかけで秘書課へ異動することになった。

そんな始まりだったと言うのに、今は社長が愛しくて仕方がないと言う展開だ。
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