4時44分45秒目の世界には
少年が、足を一切動かさず、滑るように真横へ移動した。

鏡からその姿が消える。

少女は、悲鳴をこらえた。

こらえて、ここにはいない両親を探しに、部屋の外へ出た。

が、ここにいなければ、ほかに、いったいどこにいると……?

仕方なくリビングへと走っていた少女は、そこで初めて、壁にかかっている時計を見た。

時計の針は、4時44分。

しかし、どうも、おかしい。

よく、よくよく見れば、秒針が動いてない。

その時刻は、だからつまり、4時44分44秒……

ぞろ目の時間帯……

少女は意味もなく戦慄した。

ぴちゃん。

と、

「!」

ぴちゃん。

その時、

ぴちゃん。

「……」

どこかから、小さな小さな水音が、波紋を広げるように響いた。

小さい音なのに、

ぴちゃん――

それはいやにはっきりと、

ぴちゃん――

少女の耳を叩く。

少女はゆっくりと、リビングから廊下へ顔を出した。
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