【最愛婚シリーズ】俺に堕ちろ~俺様社長の極甘な溺愛包囲網
帰り際に芽衣子さんに、駿也からの折り返しがなかったかどうか聞いてみたけれど、連絡はなかったようだ。
芽衣子さんは意気消沈したわたしを慰めてくれた。
このまま心配をかけ続けるわけにはいかないと思い、わたしはあきらかに空元気とわかる笑顔を浮かべて駅に向かう。
とぼとぼと歩いていると、ふと駅前にある電話ボックスが目に入った。
「こんなところにあったんだ……」
毎日通勤しているのに、今まで意識したこともなかった。
わたしは電話ボックスに飛び込むと、財布からありったけの十円玉を取り出し駿也に電話をかけた。
「……お願い。出て……、もしもし、駿也」
《ひより、大丈夫なのか?》
とりあえず、兄にスマートフォンを没収されたことだけを手短に伝えた。
駿也は何度も連絡をくれていたらしいが、ずっと圏外通知だったらしく、心配していたようだ。
さきほど芽衣子さんにも連絡をしてくれたみたいで、ある程度状況の把握はしていたようだ。
《心配するな。お兄さんとちゃんと話をするつもりで色々動いているから、もう少しだけ待ってくれ。とにかく悲観的にならずに、俺のことを信じて。わかった?》
「うん……駿也、会いたい」
昨日まで一緒に旅行をしていたのに、一日会えないだけでもこんなにも思いが募ってしまう。
《俺もすぐにでも会いに行きたい。
でもこれから何の障害もなく会えるように、今耐えるとときだ。だからもう少しだけ、我慢して。な?》
「うん」
十円玉も百円玉もなくなるまで、わたしは駿也と話を続けた。
最後はブツッと切れてしまうまで、受話器を握りしめていた。