【最愛婚シリーズ】俺に堕ちろ~俺様社長の極甘な溺愛包囲網
帰宅途中、何度も大きなため息をついた。

そして帰宅してすぐ、今日最大のため息をつくことになる。

「遅い」

そう言われて腕時計を確認したけれど、時刻は二十時前。

いつもどおりの時間だ。

「いつもと、変わらないでしょう。仕事なんだから、ちゃんとしなきゃ」

「そんなこと言って、アイツと会ってたんじゃないだろうな」

詰め寄ってくる兄の脇を抜けて、わたしはキッチンに向かいイライラを収めるべく、グラスに水をそそぐと一気飲みした。

その間も兄は、色々としつこいくらい今日のわたしの行動を尋ねてきた。

いい加減にしてほしい。

堪忍袋の緒が切れる音が頭の中に響いた。

ガチャン

持っていたグラスを、キッチンのカウンターの上に乱暴に置いた。

あまりの態度に、兄も驚いたようでそれまで機関銃のようにしゃべっていたのが止まる。

「いい加減にして! こっちがだまって我慢してるからって、言いたい放題いいすぎだよ。
わたしの人生はわたしのものだから、それでもお兄ちゃんにわかってもらいたくて我慢してるのにっ! 
お兄ちゃんこそ、わたしの本当の気持ちなんてわかってないんだっ」

「ひより、何言って――」

思わず眼がしらが熱くなる。「わたしにとって、家族も駿也も大事なの。それをどちらか選べって、お兄ちゃんひどすぎるよ」

「おい、そんな泣かなくてもいいだろう」

わたわたと慌てふためく兄をにらみつける。

「こんなことしたって、わたしは駿也と別れないから」

はっきりと言い切った。

兄は何かいいたそうな顔をしていたけれど、わたしは無視して自室に籠った。

もう、いったいどうするのが一番いいんだろう。

ドアにもたれかかったまま、わかってもらえない悔しさと、駿也に会いたいという思いがあふれてしまう。

天井を仰いで頬につたう涙を、一生懸命拭った。
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