【最愛婚シリーズ】俺に堕ちろ~俺様社長の極甘な溺愛包囲網
予想通りだったとはいえ、その事実に動揺してしまう。

「よろしくね、赤城さん」

うさん臭いままの笑顔を浮かべた駿也をにらみつけそうになる。

こういうやり方は卑怯なんじゃない?

ふたりだったら言ってやりたかったけれど、わたしは何とか耐えた。

「部長、ありがたいお言葉なのですがわたしには力不足のように思います。他にもっと適任がいるはずです」

きっぱりと言い切った。駿也とならみんなが仕事をしたいはずだ。

「そうか。でも皆川さんたっての申し出なんだ。ここは是が非でも引き受けてほしいだが」

まさかわたしが断るとは思っていなかったのか、部長は慌てた様子で説得する。

その困った様子から罪悪感がわいてきた。

仕事なのに、個人的な理由で断るのは間違っているんじゃないかと思えてきたのだ。

そもそもの原因は無理を言った駿也なのに、当の本人からは面白がっているような様子がうかがえる。

「赤城と仕事できると思って楽しみにしていた。俺と一緒に仕事をするのがそんなに嫌?」

「そ、そういうわけじゃないですけど」

嫌だなんてはっきり言えるわけはない。それを見越しての聞き方だ。

「だったら、問題ないな。頼んだよ赤城さん」

「え、部長」

言質は取ったとばかりに、部長はそそくさと立ち上がった。

きっとわたしがきっぱりと断る前に逃げてしまうつもりだ。
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