レフティ

“色々間違えてたけど”という彼の言葉は、私にも思い当たる節ばかりだ。

ずっとあの夏の悲劇を引きずって、こじらせまくって、私なんかを好いてくれる人を傷つけて。
友達のことも傷つけたり、彼にだって、なかなか素直になれないし。

物覚えも悪くて、彼の言うように要領も悪い。
すぐ感情的になってしまうし、なんだって人と逆のことばかり選択しがちだ。

ここでノーと言われたって引けるわけもないのだが、やっぱりつい、聞いてしまった。

「…ほんとにいいの?」

そしたら彼は、信じられないくらいに目じりを垂らして、ぎゅうっと私を抱き締めてくれる。
苦しいのは、物理的になのか、心理的になのか。
なんだかよくわからないけど、とうとう嗚咽を漏らして泣いていた。

「もう全然、里香しか無理」

― 幸せすぎて、死にそう。

使い古された言葉だけど、真にその意味を理解したのは、今この瞬間が初めてだ。
何度も、もう一緒にいられないかもしれないと思った。
そもそもこの恋が始まったときから、一度だって心が休まることはなかったように思う。

いつも彼に弄ばれないように必死で、でも結局弄ばれて。
そんな彼が、私しか無理なんて、甘ったるい台詞を耳元で囁いた。

「私のこと好き?」

調子に乗ってそんなことを聞くと、彼はわざとだろう。
そんな私を戒めるかのように、音を立てて左耳にキスをしてから、答えてくれた。

「好きに決まってんじゃん」

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