レフティ
それから2対2に分かれてクリケットで勝負をしていたが、確かに美沙はまぁ下手。
そういう私は、ミドリくんと通い詰めたおかげで、女性にしては上手い方だと自負している。
「ねぇ美沙、ルールわかってる?1とかじゃ駄目なのよ、この数字の場所狙わないと」
「わーかーるーよー、そこに飛ばないのー」
「はい、テキーラお待ち~」
鎧塚さんが運んできた2杯のテキーラ。
私たちは揃ってそれを、くいっと飲み干した。
これで私は3杯目、美沙は6杯目だ。
「てか2人とも実はお酒強いっしょ?普通そろそろギブするよなぁ?」
鎧塚さんの問いかけに、先生は笑いながら頷く。
― いつもこうやって女の子潰して、そのあと何してるんだろう。
1回キスしたからって、私は見えない敵に嫉妬を始めていた。
「全然まだいけます!」
そう言った美沙だが、虚ろな目はそろそろ限界が近い様子だ。
私より3杯も多く飲んでいるのだから、当然である。
「次鎧塚さんが美沙と組んでくださいよ。私もうテキーラやだ~」
「えー里香ひどーい!」
「おっしゃ、可哀想な美沙ちゃんを俺が救ってやるわ」
鎧塚さんはぺろっと舌を出して、上機嫌に美沙とペアを組んでくれた。
私は美沙よりお酒に強いし、今日のトータルでも、美沙の方が飲んでいることは明らかだ。
潰された美沙を連れて帰るのも大変だし、いくらイケメンとはいえ、男に潰されるというのもちょっと悔しいから。
「あの、先生、ちょっとお願いが…」
私は先生に、次の勝負にわざと負けてくれるようお願いをした。
「俺は別にいいけど…桃田さん大丈夫なの?」
「私はまだ全然飲めますんで」
先生は、若干不服そうに頷く。
「まあ潰れたら俺がお持ち帰りするから、気を付けてね」
「…は…!?」
爆弾級の言葉とともに見せた悪い顔に、開いた口の塞がらない私。
そんな私を尻目に、何事もなかったかのように先生はダーツ台の前に歩いて行った。