レフティ
「え、ここ…?」
すっと酔いが醒めた。
鎧塚さんの家だと連れられてきたそこは、この辺りに住む人ならみんな知っている駅直結の超高級マンション。
「鎧塚さんって…何者なんですか…」
「えー?俺はー呉服屋の店員です~」
いや絶対それだけじゃないだろう。
オートロックの入り口を抜けると、やけに広いラウンジを横目に、エレベーターが来るのを待った。
「呉服屋の御曹司だからね。剣士は」
「「おんぞうし…?」」
私たちは顔を見合わせた。
どうやらとんでもない人とお知り合いになったようだ。
「適当に座ってて~今グラス出すね~」
「ひっろ…天井たっか…」
「ここ1人で住んでるんですか…?」
カードをタッチして解錠された玄関ドアも、マンションとは思えない天井の高さも、桁外れに広いリビングも。
平民の私たちには、まるでドラマの世界のようであった。
「1人に決まってるじゃーん。めっちゃ部屋空いてるから、シェアハウスしてもいいよ?」
鎧塚さんはにこやかに言ったが、なぜ部屋が空くほど広いところに住んでいるんだという疑問が湧くのは、やっぱり私が平民の証なのだろうか。