レフティ
「んじゃ、乾杯」
もう一度4人でグラスをあわせて、今度はワインからスタートした。
来る途中に買ったチーズスナックとよく合うが、これは確実に二日酔いコースであると悟る。
「よし、大富豪やろうぜ」
“御曹司”の鎧塚さんがやりたがることは、まるで大学生のようだ。
「いーね」
しかしその提案に見せた美沙の笑顔は、もしかしてを予感させていた。
あのオラオラ系よりは、比べるまでもなく鎧塚さんの方が素敵な男性だ。
まぁ女性を潰そうとするのは、ちょっと頂けないが。
もし美沙がそうなら―、私はお節介にも、アシストのタイミングを見計らっていた。
「だー、また俺かよー。まじ桃田さんえぐい。優しくない」
2、3回大富豪を繰り返すも、先生は大貧民から抜け出せない。
革命返しをした私に向けられた先生の恨めしい目は、あまりに可愛らしかった。
「ほら大貧民さん~早く配ってくださいよ~」
大富豪になった私は、大貧民の先生にそうおどけて言う。
くそーっと言いながら大人しくトランプを切る先生は、もう先生の姿ではなかった。
私たちは深夜にも関わらず、本当によく笑っていて、気付けばすでに2本目のワインの瓶が空になりそうな頃。
「ねーほんとここ最近で一番楽しいわ!今度みんなで旅行行こうよ~」
「え、行きたい行きたい!」
鎧塚さんの提案に口元を押さえた彼女の目には、もう完全にスイッチが入っていた。
嫌味じゃなく、美沙の切り替えの早さは絶対に私も見習うべきである。
「あ、俺富士急のチケット4枚手に入るよ」
先生の言葉に後押しされて、私たちは勢いに身を任せたまま、富士急ハイランドへの1泊2日の旅行を計画することになった。