レフティ

「それ、誰にでも言うの?」

首筋を舐めあげる先生の舌遣いに、声をあげそうになった。
まるでさっきまでのキスのように、先生は左耳にかぶりつく。

「くすぐった…」

私は先生の肩に口を押し当てて、必死に声を殺した。

「……可愛い」

耳元で息を吐くように囁かれて、びくんと身体が跳ねる。
久しぶりの感覚に、もう私は気でも失ってしまいそうなほど緊張していた。

「ね、知ってた?これは左手の方がやり易いんだよ」

その言葉と同時に、プチンと外された下着のホック。
Tシャツの中に忍び込んだ左手がウエストの辺りをなぞったとき、ようやく私は目が覚めたようだった。

「先生っ…ちょっと…待って待って」

「しーっ。静かにしてないと起きちゃうよ」

私はすっかり先生に酔いしれて、すぐそこで眠る美沙と鎧塚さんの存在を忘れていた。
先生とこのままどうにかなっても、後悔はしないし、なんならどうにかなりたかった。
ただ、今は違う。絶対に。

また先生の熱い舌をねじ込まれると、頭が真っ白になりそうになるが、ここは必死に堪えた。

「…ほんとにっ…!」

胸の膨らみを捕えられて、本当にまずいと思ったとき。
運よく離れた唇の隙に、私は少し大き目の声をあげた。

「……ここでやめんの…?」

服の上から胸を撫でる手つきは、明らかに私を誘っている。
そんな熱を帯びた目で見つめられると、まるで私が間違っているような感覚に陥ってしまう。

「だって…皆いますよ…」

「桃田さんが静かにしてれば平気だよ」

また先生の手は、服を捲り上げて中に侵入しようとした。

「いや今は無理っ…」

本当は私だってこのまま終わりたくない。
だけどそんな野獣のようなこと、私にはできそうにないのだ。


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