レフティ
「…もー…」
困ったように笑った先生の唇が、軽く触れた。
「すいません…」
一般的な感覚だよね、と思いながらも、私も制止するのが遅かったことを少しだけ反省して謝ったが、それが逆に先生を駆り立ててしまったようで。
「今は、って言ったもんね。2人ならいいんだよね?」
「わっ」
床に押し倒された私に覆いかぶさった先生は、オレンジの光を背負って目にかかった前髪をかきあげた。
とろんとした目をしながらも口元を緩めた彼のその表情は、明らかに男性の顔で、いつも教室で見るあのふにゃっとした先生の面影は、もうどこにもなかった。
この征服感に胸が高鳴ってしまう私は、ひょっとしたら異常な性癖なのかもしれない。
先生からまったく目が逸らせなかった。
「…旅行、楽しみ増えたね」
また軽く触れるだけのキスをされたという記憶を最後に、翌朝の私にはこれ以降の記憶がまったくなかった。