レフティ
「今日は着物を着るところまでですが、色柄は私が勝手に選びました。あしからず~」
菊池さんにはえんじ色の色無地を、私には淡いピンク色の色無地が手渡された。
別に深い意味はないだろうし、単にサイズの問題とか、たまたま手に取ったものだったとか、その程度で選ばれたのだろうと思う。
だが恋をしてしまった私には、“先生が選んでくれた”の部分だけが延々と脳内リピートされて、この淡いピンク色の着物を買い取ってしまいたいくらいに、嬉しくて仕方ないのだ。
「桃田さん、にやにやしない~」
「へ!?」
素っ頓狂な声に、先生は少しだけあの日のような笑顔を見せた。
― そんなにドキドキさせないで。
ついていくので精いっぱいな授業中に、私の脳裏にちらつくあの日の先生は、邪魔で邪魔でしょうがない。