レフティ
「じゃー今日のちゃんと復習してくださいね。来週は帯までやりますからね~」
「「はーい」」
「で、桃田さんはちょっとコースのことで話があるので残ってくださーい」
「え」
今日の私は居残りになる理由があまりにもありすぎて、なんの反論もできなかった。
もしかして、やめてくれとでも言われるのだろうか。
せっかく着物クリップも買ったというのに…
不安な面持ちの私の肩を、菊池さんが優しく撫でた。
「大丈夫よ、先生そんなこと言わないって」
「そうだといいんですけど…」
これありがとう、と言って貸していた黒猫のクリップを差し出されたが、菊池さんのあの喜び方を思い出して、私はそれを彼女に譲ることにした。
「え、いいよいいよ」
「だってもう私いらないかもしれないし…もらってください」
「じゃあ…次会えたら返すから。ね?」
眼鏡越しに目を細めた彼女に、私は頷くしかなかった。