レフティ
「なんもしないから、旅行までは」
先生の手は、解かれた私の髪をほぐすように撫でる。
その間もずっと、私の目は離してくれない。
そして、何もしないなんて言いながらも、その唇はやっぱり近づいてきた。
だけど私にそれを避ける理由は、何一つないわけで。
重ね合わせた唇はあのときとは少し違って、より鮮明にその感触を確かめることができた。
2人きりの教室に響くキスの音も、あのときよりもずっと大きく耳に響く。
唇を離すと、妖しげに微笑む先生と目が合って、そこで初めて気付いた。
教室が明るいから、あのときとは感覚が違ったのだ。
急激に押し寄せる恥ずかしさに、私は思わず先生の胸に顔を埋めた。
「ん、なに?したい?」
― !?
「違います!」
もう完全に先生のペースに呑まれている。
したい?って、そんな風に聞く人、今までに会ったこともない。
本当、全然、私の手に負えるような人じゃないや先生は。