俺様系和服社長の家庭教師になりました


 次の日。
 
 「冷泉様、覚えるの早いですね!」
 「まぁ、これぐらいならな。言葉覚えるのは昔から好きなんだ。」
 「そうなんですね。ちなみに、何語がしゃべれるんですか?」
 「英語、韓国語、中国語ぐらいだな。仕事で必要だから覚えた。」
 「すごい、、、。」

 その日の授業が終わる10分ぐらい前に、そんな話しをしていた。読み方や挨拶を昨日教えたばかりなのに、1度覚えたことは忘れないのか、すらすらと口がギリシャ語が出てくるのだ。

 しかも、発音にも違和感がない。それに関心しながらも、沢山の言葉をしゃべれると聞いて納得してしまった。


 「すみません!話しが脱線してしまいました。では、次回はギリシャの地図を見ながら地名などを練習しようと思います。あとは、お料理なども。」
 「あぁ。……そうだ。それで、思い出した。」


 そういうと、テーブルの脇にあったバックから、袋に入った何かを取り出した。
 

 「これ、おまえにだ。」
 「え、なんでですか?……私、何もしてませんよ?」
 「昨日の本とかノートとかの代わりだ。どうせ金払っても受け取らないだろ。」
 「…お金は確かに受け取らないですが。でも、あれは授業に必要だから買っただけなんですよ。」
 「いらないなら捨てるぞ。」
 「それはだめです!」

 そういって紙袋に入ったものをゆっくりと受け取る。まさか、そんな事まで気にしてくれると思ってなかったため、驚きつつ「ありがとうございます。」とお礼を言った。

 こうやって、細かな気配りが出きるから、あんなにも大きな会社の社長になっているのだろうか、と、紙袋を見つめながら考えてしまう。

 彼と会うたびに、どんどんと印象が変わっていく。なんて、かっこいいんだろう………と、思っていた瞬間、翠はその考えを忘れようとした。


 (冷泉様はお仕事の相手。そんな風に思うわけがないわ!何を思ってしまったんだろう。)


 と、心の中で葛藤していると、色が怪訝そうに翠を見つめていた。

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