俺様系和服社長の家庭教師になりました


 「あ、あの!開けてみてもいいですか?中身が気になって…。」


 そういうと、素っ気なく「ああ。」と返事を貰ったので、ほっと安心しながら中身を開ける。

 「わぁ!!これって、ギリシャの写真集ですか?すごい、綺麗………!」

 色がくれた物は、色鮮やかな写真集だった。「大自然とギリシャ」と書かれており、自然との建物や街並み、人々の暮らしなど、沢山の写真が載っていた。

 「アクロポリスは有名どころですよね。サントリーニの青と白の島は行ってみたいですよね!わぁーこっちも綺麗。どこだろう、、、。」

 ページを捲る事に綺麗な場所や、知らない所、神秘的な雰囲気の島など、翠を夢中にさせるものばかりだった。熱心に見ていると、隣から「くくっ」と小さく笑う声が聞こえ、翠ははっとした。

 「すみません!今は仕事中ですよね。なのに、1人で夢中になってしまって。」
 「いやいい。気に入ったか?」
 「はい!ありがとうございます、冷泉様。とっても嬉しいです。」

 翠は大切に写真集を胸に抱き締めながら笑いかけると、色は少し驚きながらもつられるように優しく微笑んだ。
 それが、とても幸せそうで、それでいて悲しげで。翠は、嬉しいのに切ない気分になった。
 自分はどうして彼にそんな悲しい顔をさせてしまうのか。考えてもわからないのだ。


 「おまえは、本当にころころと表情が変わるな。子どもみたいで、見ていて面白い。」
 「そ、それは、冷泉様もですよ?」
 「…俺が?」


 何故そんな事を言ってしまったのか。
 翠は自分でもよくわからなかったが、彼に伝えたい。そう直感的に思ったのだ。
 翠はギリシャの写真集をぎゅっと握りしめて、言葉を続けた。

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