夢原夫婦のヒミツ
自分の部屋へ向かい、大切にしまっている大和さんとの思い出の品が入った箱を取り出した。

ベッドに腰掛けて中を見ると、彼とやり取りをした沢山の手紙が入っている。

「懐かしいな」

大和さんからもらった手紙をまるでお守りのように、毎日持ち続けた私は少しずつ前に進んでいった。

おばあちゃんと共に、お父さんたちをしっかり見送り、隣町に住むおばあちゃんの家で新しい生活をスタートさせた。

学校に通うのは大変になったけど、蘭たちと離れたくなかったし、みんなと一緒に卒業したかったから。

私たちが住む地区は、壊滅的状況だった。幼い頃から顔見知りだった多くの人が亡くなり、退院後に訪れた家のあった場所は、まるで違う場所のようになっていた。

お父さんたちの畑もなにもかもなくなり、全部飲み込まれていた。

こんなにひどい状況の中、生きていられたのは本当に奇跡だと思った。

蘭の家も全壊し、彼女は家族で市営住宅へと移った。佐介の家は山間から離れた場所にあり、被害は免れた。
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