パクチーの王様

 途中で芽以に水をつぎ足されながら、綺麗にローストを食べた圭太は立ち上がり、レジに行く。

 芽以は慌てて走っていくと、
「珈琲でも飲んで帰りなよ」
と圭太に言ったが、圭太は、いや、いい、と言う。

 パクチーの香り漂うこの店に、あまり長く居たくないのかもな、と思いながら、会計をしていると、圭太はこちらを見、
「俺はちゃんと食べたぞ。
 また来てもいいか」
と訊いてきた。

 あ、うん、そうだね、と曖昧な返事をしていると、逸人が出てきた。

「お前、こんなところに来てる暇があるのか。
 結婚式の準備があるんだろう。

 会社の方も今、忙しいんじゃないのか」

 そう逸人が言うと、圭太は財布をしまいながら、

「そうだな。
 お前が居なくなって、お前を支持する連中が激増しているからな」
と言う。
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