恋の仕方を教えてくれますか?
マニフェスト
それからしばらくして榊さんは課長と一緒に私たちのオフィスにやってきた。

「やば、イケメン…」

麻里恵がそう呟くのを私は隣で聞いていた。

榊さんに見惚れているのは麻里恵だけじゃない。このフロアにいる全員が榊さんに釘付けになっている。

三年前のあの日のことが鮮明に蘇ってきて私はなぜか一人で赤面した。

確かに久しぶりに見る榊さんはかっこよかった。

黒いスーツは榊さんの肌の白さを際立たせていたし、三年前とは前髪の分け目も違う。そのせいか実年齢よりも大人びて見える。

私のデスクを横切るとき一瞬、切れ長の榊さんの瞳が私を捉えたような気がした。

課長と私のデスクは通路を挟んで隣同士。

案の定課長は榊さんを自分のデスクに連れてきた。目の前には榊さんがいる。

「はーい、みんな注目!朝礼始めるぞー!!」

課長…そんな号令かけなくても皆さんとっくに注目してますよ。

恐る恐る顔を上げて、課長、そして榊さんへと視線を移す。私の席は三年前から変わっていないけど、榊さんは気にも止めていないようだった。

その視線はオフィスの端の方まで見渡すように遠くを見据えていた。

「みんな揃ってるか?じゃあ始めるか。」

課長は咳ばらいを一回して朝礼を始めた。
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