mirage of story
〜4〜












「錨を上げろ!

遅れる奴は置いていく!足手まといになる奴は容赦なく置いていくぞ!」





ギイィィッ。
........ザバンッ。


鎖を巻き上げる音がして、引き揚げられた錨が水面を大きく揺らす。
揺らされた水面は大きな波紋を描き、その上に浮かぶ木の造形物―――水面を走るために人によって作り出された船を揺らした。

















「............シエラ」



揺れる船。
その船の上、その甲板に一つの人の影。

遥か水面の先を見据え人影は、カイムは此処には居ない仲間の名前を呟いた。





船の上では出航の準備に忙しなく船員達が駆け回っている。

そんな忙しない中、カイムも何か手伝えることはないかと捜したのだが、船に不慣れな自分が動くと逆に邪魔になると分かり止めた。
だからせめて邪魔にならないよう、船の一番前端のこの甲板へと逃げてきたのである。







甲板から見つめる水面。
遥か向こうまで広がる湖。

その水面は上がり始めた太陽に反射に、キラキラと煌めいて綺麗だ。
この水面の煌めきを手に一杯掬ってそれを固めてしまえば、きっとこの世で一番綺麗な宝石になるに違いない。












「..........」



だけれどそんな最上の美しさを前にしても、カイムの心は晴れない。

出るのは溜め息ばかり。
湧き上がるのは底知れぬ不安だけ。









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