mirage of story
〜2〜









二ヵ月程前のことになる。

彼が住むは小さな村。
そこは滅多に誰かが立ち寄るような場所ではないそんな所。



そこに旅人がやってきた。
その人は、たった一人だった。




彼と同じくらいの歳。
綺麗な水色の瞳の少女。

少女がこの今の世界で一人旅。
信じ難い話だった。




だが話を聞けば彼女にはそうするべき目的も理由もちゃんとあった。


初めは凄い人だという印象しか持たなかった。
ただそれだけで、彼女がこの村を去ればもう関わり合うことは無いと思っていた。

そんな出逢いだった。


だが目的を果たすため一人で外の世界に飛び出したというその彼女に、カイムは次第に惹かれていくことになるのだ。








ただ擦れ違う、それくらいしか無い関わり。



――――。
それなのに擦れ違うその度に感じる彼女の雰囲気。気配。

今まで感じたことの無い、初めて会うような人。
カイムは自分とは違う未知の世界を生きる彼女に惹かれた。










関わり合うことの無かった数日。
きっとこのまま彼女は去っていくのだと、そう感じていた。


そんな矢先。
その時は突然訪れる。






"貴方に頼みたいことがあるのです"

そう。
彼女が自分を訪ねてきたのである。









頼みたいこと。

カイムには思い当たる節は無い。







頼みたいこと?
彼は思い切って、彼女に聞いてみた。



........。
彼女は暫らく黙った。

それから暫らくして何処か意を決したように口を開く。









「剣を、教えて欲しいの」


「え?」



予想外の言葉。
思わず聞き返してしまった。











「私、強くなりたいの。
もう誰も傷付けさせない、そのために。
大切なものを守るために」



少女の瞳の中に、何か哀しさを感じて思わずカイムは目を逸らした。







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