mirage of story
二人の若き王。
彼等は―――ライルとシエラは二人一生寄り添い、一生この新しい国に尽くそうと心に決めた。
ライルは魔族側からの、そしてシエラはかつてのルシアスの名ではなく人間としての名で人間側からの平和の協定の象徴となった。
新たなる国の誕生。
それは若き二人が種族関係無く集う大勢の民達の前で、永遠を誓った日でもあった。
シエラとライル。
そしてジェイドとロキに、それからジス。
この五人の名は闇から世界を救った英雄として、世界の隅々にまで広まった。
それから世界を救った光として、王となった二人を契約者とする水竜と炎竜は平和を司る象徴として―――神竜としてこれから先長く人々に信仰されることとなった。
英雄として語られる彼等の名は世界の歴史の中に、そしてこれから先も受け継がれ続く人々の記憶の中に刻まれた。
きっと彼等の名はこの世界で、未来永劫忘れ去られることはない。
そう。
彼等が居なければ、この世界はあの日あの時に終焉を迎えていたのだから。
全てが、終わっていたのだから。
あの日。
世界が救われたあの日。
歓声に沸く戦場の中で、誰もが守られた未来に喜びを馳せた。
世界中が、喜びに包まれた。
そう、あの日あの時だけは世界中の何処からも哀しみというものが消えた。
......そう皆は信じていた。
だけれどあの歓声に沸く喜びの世界の中で、その喜びの中心であの日あの時に存在した唯一の哀しみが在る。
歓声に掻き消された、悲痛すぎる叫び。
周りの者は―――いや今は最早哀しみに絶叫した彼女ですら知らない事実。
あの時の唯一の哀しみは.......もう一人の英雄と呼ばれるべき彼は世界の誰からも忘れられた。
何よりも誰よりも大切に想った人にさえ、大切に想われた人にさえも。
忘れたという事実すら、忘れられた。
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