mirage of story
 
 
 
 


 
「仲間だから言っているの!
仲間だから、私のせいでカイムを巻き込むわけにはいかないんだよっ!」




そうだ。仲間だからカイムが傷つくことなんか、見たくないんだ。


誰だって同じ。
大切な仲間が傷つくことなんて、望むわけない。

当たり前のことじゃないか。






だから。





(逃げて......カイム)




「シエラ」


「.........え、キャッ!」




ハッとする。
だが気付いた時にはもう、シエラはカイムの腕の中に居た。

いわゆるお姫さま抱っこという状態だ。








「な、何するの!?」


シエラは、頬が熱くなるのを感じた。

こんな状況。
今まで経験したことがないシエラは、だいぶ焦った。








「俺はお前を残して逃げる気も、もちろんここで死ぬ気もないから。

これしか方法ないだろ?」




カイムは、そう言って笑った。

その笑みがフワリとシエラを包んで、何だか元気が出た気がした。
こんな状況だというのに、何だかその笑顔は優しく温かく感じられた。


凄く、気持ちが落ち着く。






「.....ごめん。
私、迷惑ばっかりかけて」




でもこうやって迷惑を掛け合えるのが、仲間というものなのかな。
そう思えた気がする。


ずっと一人だと思ってきたシエラが、心から信頼出来るカイム。





 
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