mirage of story
肌が熱気で、ジリジリと痛い。
さっきのカイムの言葉に気が掛かることもあったのだが、今はそのことを気にする暇はない。
今は、この状態を打破する手立てを考えないと。
「シエラ、立てるか?」
カイムがシエラへと手を差し出した。
差し出されたその手が周りで燃え盛る炎に血潮が透かされて、きらきら紅く見える。
そして何とも逞しく見えた。
「大丈夫よ、これくらいの怪我なんて―――ッ!」
体に激痛が走った。
言葉とは裏腹に、血の滲む傷がひどく痛む。
この傷では一人で立つことすら出来ないようであることを感じて、シエラはキュッと胸が締まるのを感じた。
「っ!?おい、無理するなって!
.......これ以上傷が開いたらどうするんだ。出血が多すぎる」
(......っ)
シエラは自分の弱りきって思うように動かなくなった体を目の当たりにして、でもどうすることも出来ない自分を恨んだ。
今ここから逃げ出さなければ、この炎に飲まれて確実に死ぬ。
それも、自分のせいで此処から抜け出せないカイムまで巻き込んで。
(それだけは―――それだけは絶対に駄目)
「逃げて、カイム!
私のことはいいの。早くしないとカイムまで.....」
「よくないッ!
シエラを置いて俺だけ逃げるだなんて......出来るわけない!」
カイムの強い声が、シエラの言葉を遮った。
「仲間を見捨てるわけがないだろう!?」
カイムのまっすぐな瞳が、シエラを捉える。