mirage of story


 
 
 



それなのに、彼の想像は裏切られる。

だが決して悪い裏切りではなくて、意表を突かれるようなものではあったが良い裏切りだった。



........。
薄く開かれた瞳に映るのは表情穏やかな彼女の顔。

まるで昨日の出来事などなかったかのように表情があんまり穏やかで安らかで、カイム戸惑いそしてその彼女の表情に釘付けになる。








(.........)



こちらを真っ直ぐ見つめる彼女の瞳の中には、哀しみや恐れの色。
だがそんな感情以上に勝る何かがその瞳の中に共存していた。


ッ。
それは強さ。
これから先に待ち受ける、どんな困難も打ち破ってゆけるようなそんな強さ。 
彼女の心の強さがそのまま表れたような強く美しい色だった。









(やっぱり、シエラは強い。
こんな状況でも......あんなに強さの籠もった瞳で居られるだなんて。
俺なんかよりも、ずっと彼女は強い人だ)




釘付けにする彼女と彼女の強さ。

カイムは名残惜しく思いながらもそんな彼女に安心して、薄く開けていた瞳を閉じて思う。



――――。ッ。
だけど目を閉じても、カイムの目蓋の裏にはシエラの強い瞳がくっきりと刻まれたまま。
彼は暫らくその瞳の余韻に浸った。









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